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広がるメロディ、広がる音楽。連なる音は世界中へと注がれてゆく。
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プロフィール
HN:
八城 友
年齢:
34
性別:
男性
誕生日:
1990/04/17
職業:
フリッカースペード→フリッカークラブ
趣味:
歌うこと、音を聞くこと、本を読むこと
自己紹介:
ここはWT2シルバーレインのキャラクター『八城友』のキャラ(&背後)ブログです。興味のない方、分かる気のない方は回れ右でお願いします。

●カテゴリ説明
・にっき。:友の日記。
・うた。:背後が思い浮かんだ歌などをつらつらと。また、アーティストの紹介なども。
・追憶:友の過去話など(コメント不可)。
・馳想:友が今考えていることなど(コメント不可)。
・背後日記:背後に関するもの。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
この作品(画像)は、有限会社トミーウォーカーの運営する『シルバーレイン』の世界観を元に、
有限会社トミーウォーカーによって作成されたものです。
イラストの使用権は作品を発注した八城・友に、著作権は作者様自身に、全ての権利は有限会社トミーウォーカーが所有します。
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がちゃ…と、ドアを開く。


途端、咽返るような煙とアルコール、薬物の匂い。
ある意味では嗅ぎ慣れた匂いに、だが顔を顰める。

自分の音楽を聞く人間の中に、嗜む人間がいない訳ではない。
最後ものもはともかく、酒や煙草は法律で認められてる以上、趣向品としての嗜みを否定する気がないのも確かだ。

だが―――と、苦々しく唾を吐き捨てる。

これは、酷い。

チケット売り場は窓ガラスが割られ、地下に続く階段に人が転がっている。
ぐったりとしていて寝ているのか起きているのか分からないが。

ギターケースを手に自分達の塒に押し入ってきた異物を確認して、男達はゆらりと立ち上がる。

「あー…なんだてめ」

言葉は、最後まで聞かなかった。

思い切りギターケースで横っ面を張り飛ばす。
たたらを踏んだ男の足を踏み抜いて、傍にあった椅子をそのまま蹴り飛ばす。

シャブ漬けになっていた男達が、即座に反応することなど不可能だった。

ギターケースを開ける。中に入っていたのはギターではなく、縄。
手と足を縛り、ガムテープで口もふさぐ。さらに傍の柱にくくりつけて逃げられないようにすると、更にいくつか道具を取り出して、もう一度ギターケースを担ぎ直すと地下へと降りて行った。


入口で予想はしていたが……狂楽とはこの事か。
ガンガンに流され続ける音楽。
自分がいつも流しているものと大差ないものだが…だからこそ、侮辱された気になる。
酒に溺れる女。その女の股に押し入る男。
明かりはあれど煙の所為で靄がかったかのように見える。

「世界結界、ね……関係ないって言えれば楽なんだけど」

自分が持った能力。
それを使えばものの数分で制圧する事は可能だろう。
腐っても能力者だ、同じ力を持たない以上、彼らに勝ち目はない。
だが―――腐っても能力者である以上、彼らにその力を使う訳にはいかない。
自分の野望の為に、懸命に生きている人達を脅かす訳にはいかない。
そうなってしまえば、恐らく自分はもう音を奏でる資格などなくなるのだから。

これは、自分の為だけの戦い。
胸を張って、神に唾を吐けるように。



男達が最初に気付いたのは―――もう、全てが終わってからだった。
煙の類が違う。なんだ、これは。
そう思える人間は運がよかった。
だがさらに運がよかったのはそう思う間もなく眠りに落ちた奴らだろう。

朦朧とする意識をなんとかしようと被りを振った男の前に立つのは、ギターケースを担ぎ、顔に気味の悪いマスクをかぶった人間だった。
低い声音で口を開く。男だとそれで分かった。

「―――この連中を纏めてるのはお前か?」
「は、なにいってん」

瞬間、男は足を振り上げた。工事用に爪先に金属板が埋められた特殊ブーツだ。何か問い直す事もなく、乱入者は無言で何度も蹴りつける。
顔。腹。胸。
確実に痛めつけられ、今度は痛みからの逃避に意識が遠のき始めたころ、漸くその男は口を開いた。

「訊いてんのは俺だ。お前が質問する権利はねぇ……もう一度だけ訊いてやる。
ここの連中のなかでお前がトップか?」
「……お、くに…市平さんが」
「ヤクはどっから」
「……市平さんが…」
「そうか」

折角答えてくれたのに悪いが―――意識は取らせて貰う。
そう男が呟くと同時に、目の前がブラックアウトして行く。
考える事も、時間も、男には与えられなかった。



結局、銀誓館の連中に頼るんだけどね。

楽屋へ向かう廊下の途中。マスクの下で苦い笑みを浮かべる。
市平は王様とでも勘違いしていたのか、自分の力を奢っているのか、廊下に人を配置している様子もない。
さっきの煙は睡眠弾。
銀誓館の能力者達が集まる場所―――結社にて購入していたものだ。
効果が不明な為、被害者救助の依頼で使えるのかどうかわからないと言われていたので取り敢えずのつもりで使ってみたのだが…予想以上の出来だ。

適当に作ったからもう二度と作れないって言ってたのがもったいないくらいだなぁ…。

小さく呟きながら、楽屋のドアをノックする。
中の空気が変わった。

「……誰だ」

「いえ…ちょっと。殴り込みをかけたイカれた奴がいまして…」
「お前らだけでやりゃいいだろうが……死にてぇか、お前も」

よく聞けば、女の嬌声が僅かに耳に入ってくる。

「すいません。ちと厄介でして…」
「…しゃーねぇな」

がた、と音がした。
すかさずドアの隣の壁に寄る。

「すぐ行く」
「お願いします。俺らのトップはやっぱりあんただ」

適当に返事を返しながら、手の中の物を握り直す。

次の瞬間、ドアが蹴り破られた。
蹴り飛ばしたのは自分より頭半分ほど背の高い男。
派手な音を立てるドアに見向きもせず、思い切り顎に向けて拳を繰り出す。
―――が、目の前に見えたのは相手の拳だった。

「ぐ…ぎっ」

たたらを踏む。
チカチカと瞬く視界を無理やり覚醒させ、相手の姿を睨みつける。
手応えはあった。最悪相討ち位のダメージは行ってるはずだが…。

「あいつらが俺に助けを呼ぶ? んな訳ねぇだろばぁかが」

男も口端から血を流している。が、その口に浮かぶは笑み。

「あいつらはかなわねぇとなったらすぐに逃げる。んでまたほとぼりが冷めた頃に戻ってくる…ゴキブリだよ。俺がいるからな…ここは俺がトップなんじゃねぇ。ただ、俺のねぐらにあいつらがゴキブリみてぇに寄生してるだけだ」

くっくっ、と笑う。奥には服だけで己の恥部を隠した女。
ねぐらにしていた、と言うのは本当だろう。本来楽屋であるはずのこの場所にはベッドがあり、住むにも十分な環境になっている。
外とは違い、ここだけは割と片付けられているのも女が掃除していたからだろうか。

「……ヤクを売ってるのがお前だって聞いたんだがな」
「だからどうした。取り敢えず今日みたいな壁になる。金もになる。ゴキブリだろうが使い道はあるんだよ」
「お前はどっから?」
「お前が聞いてどうすんだ。マヤクボクメツキャンペーンですってか」

へらへら笑う市平だが、はなから返答は期待していない。
手にしていたものを下手で投げる。次の瞬間かっと周りを劈く様な光。

「うおっ?!」

銀誓館はほんと、なんでもありだよね…こんなもんまで手に入れようと思えば、手に入れられる。
心の中だけで呟きながら、再度手に握り直す。
閃光弾など、一瞬のまやかしにしか過ぎないだろう。

だから。
握り直すのは、鈍く輝く、相手を殺傷せし得るもの。

それを的確に―――冷静に、相手の腹へとめがけて投擲する。

「ぐ…ぅっ!?」

さすがに防刃ジャケット等着ている訳でもない。
ナイフはやすやすと市平の腹をえぐり、瞬く間に足元に鮮紅の海を作っていく。
よろり、と巨体が揺らいだのを容赦する理由もなかった。
一気に間合いを詰め、ナイフを掴む。
ぐい、とひと捻りすると、手元に気味の悪い感触が相手の臓器を傷つけた事を伝えてきた。
一気に、真っ直ぐ引き抜く。塞ぐもののなくなった傷口からさらに広がる血の海。

膝をつき、倒れる市平を一瞥し、静かに口を開いた。

「……悪いが、正攻法じゃ勝てないんでね。だが…こう言う事になる覚悟はあったんだろ」

市平はまだ手を伸ばすが、それを踏みつけると冷徹に告げた。

「止血はしてやる。死にたくなけりゃ条件を飲め。……いいな」

女を見やると、ヒッと声にならない悲鳴をあげてベッドの隅に逃げようとする。

「……血を止めろ。やり方は教える。出血以外は大したことねぇが…出血多量が死因ってのは割とよくあるんだぞ」

はっきりと告げると、女は涙を流しながらも市平に近寄りガタガタと手を震わせながら止血を始めた。
市平の意識がまだある事を確認すると、顔を掴んで目線を合わせる。

「ここはもう俺の城だ。……いいな」
「てめぇ、名前は…」
「死ぬか二度と近寄らねぇか、選択させてやってんのはこっちだ」
「ぐが…っ。……っ…分、かった」

指を捻り上げると、市平は顔を歪ませながらも小さく答える。
その言葉を確認してようやく立ち上がると、携帯を取り出した。

「…酒と薬に酔い、仲間割れの結果、こうなった。ここで起きたのはそれ以上でもそれ以下でもない。そう言う事だ。いいな? …病院には連絡してやる。そこの奴も逃げるならとっとと逃げろ。どうせ警察もすぐに来る」

一方的に告げると、三桁の番号を押した。

「もしもし…あの、なんか怪我をした人がいるんです。ええ、なんかライブハウスで喧嘩があったみたいで…警察に連絡しようかって思ったんですけど、怪我が酷いみたいで…ええ、名前は『DustBox』です。はい…」

口調とは裏腹に、冷静に市平を見つめる。

「く、狂ってる…」

そう女が呟くのが聞こえたが、聞こえないふりをした。
携帯の電源をきると、もう用はなかった。


掃溜めから出て15分後。
サイレンとともに白いバンが来たのを確認すると、財布からよれよれの名刺を取り出す。


「もしもし……」
『もしもし…君か。早かったね』
「賭けは俺の勝ちだ。今終わる」
『……と言うと、君一人でやったのか』
「やれっつったのはあんただろうが。事後処理は知らん。警察に任せる」
『ああ、麻薬やドラッグについては警察に任せておけばいい。私が出した賭けは、あくまであそこに巣食う奴達を排除する事だけだからね』
「……じゃあ、改めて。賭けは俺の勝ちでいいんだな」
『そうとも。おめでとう! 君は新しい掃溜めの王様になったんだ』
「ああ、その事だがな」
『うん?』
「あそこの使用権だが…あくまで俺は使用者でいい」
『と、言うと?』
「オーナーは別の人間にでも任せろ。それこそ今度は真っ当な奴にな。」
『……で?』
「なんならあんたでも構わん。『普通のライブハウス』として機能させるだけだ。儲けた金はあんたの懐にでも入れろ…どうせ俺の音楽じゃまだ入るほど残るかどうかわからんがな」
『……』
「俺は王様になんてならない」
『……』
「……」
『条件は?』
「改装を俺に任せる事。名前を変える事。ここに来てくれる奴らの音楽に口出しをしない事」
『…君の野望か』
「……」
『……名前は?』
「……ここはもう掃溜めじゃない。音楽を愛し、バカ騒ぎを愛して、笑顔になる場所だ。ここを訪れる新しい風達が古き良き風と混ざり合い、無二の旋律となるような場所…」


―――――――Vintage Wind
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